午後と蛍/
木立 悟
光へ終わる光があり
片手におさまる朝に目をふせ
雨の埠頭を巡っている
手首に根づいた花の声
聞くものもなく冬は深まる
干潟を跨ぐ鉄の曇
なだらかになだらかに降りつもる赤
墨の波を
小さな光が浮き沈む
どうすることもできずに
見つめつづけている
暗がりが暗がりのなかを飛び
音はふちどりに消えてゆく
ひとつの波が さらにさらにひとつの波が
ひとつの羽を憶えている
祈ることを止め
差し出される手のひら
堕ちるものの丸みを
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