午後と蛍/木立 悟
やわらかな境いめに群がる匙
花の音に廻る匙
額と背 二つの灯
ふいに冷える頬
小さな天体の陰
三つの雨のはざまの静けさ
遊具に残るしずくのなかを
蒼く蒼く遠のく羽
発しては消える
腔の言葉
意味も意志もない
肉の言葉
水を浴びては増える弦
堕ちることの丸みへ
触れることのできない線の
理由を記した二重の冠
酔いも眠りも目覚めでしかなく
どこまでもひらき 見ひらいている
数十年前の銀色に
触れては自身をとりもどすひと
川岸から
翳りの波を見ている
光を持たぬ蛍
うしろから抱く
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