輪唱/吉岡ペペロ
使い古された感もある言葉だけれど
過去と他人は変えられない、未来とじぶんは変えられる、
でも僕ら大半の凡人は
後悔に酔いしれてみたり
まわりのせいにしてみたり
そんなことをして過去の延長線上の未来に暮らしている
未来とじぶんしか変えられないのに
夜の帰り道
緑の息づかいを聴いていると
今を歩いているのに
懐かしい気持ちに気付いている
自然は過去ではない
自然はただ繰り返しているだけだ
懐かしがっているのは僕だ
南の低いところに赤い月が顔を覗かせている
僕は風に前髪をなぶられている
新緑の香りがカレーの匂いに消されてまた戻ってきた
乗り換えのホームで誰かを待っていたことを思い出す
それは二十年まえの失恋の記憶
電車の到着(通過)を告げるアナウンスが輪唱する
僕の頬をすこし長く風がなぶっていた
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