真上から/木立 悟
水を巡るたび
水は遠くなる
粉と粒 途切れ途切れの
真昼の声
岩と鐘
傾きが集まる野
見つからない 草色の器
見つからない
わたし 電飾
惑い 召喚
手動の世界の
罠を回す
一は三に
またその逆に
痕跡もなく繰りかえし
咎められぬまま帰路を呑む
光をこぼすまいとして
手のひらをこぼしつづけている
水のなかですれちがう音符
互いの背をつぶやきあう泡
雨が霧を押し
霧が音を押す
ききわけのない少女が
軒先の高さの言葉を描く
杯から器へ あるいは逆へ
海と川のはじまりへ
上だけの祭 下だけ
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