詩集『乾杯』橋爪さち子/渡 ひろこ
 
 著者は第16回詩と思想新人賞を受賞した橋爪さち子氏である。
すでに二冊の詩集を出されていて、もうベテランの域に入っていると言ってもいい詩人が新人賞を受賞したのは、
そこに新鮮な感動と発見があるからだとあらためて思った。
 この詩集『乾杯』に収められてある新人賞受賞作品の「手紙」は、読み手をハッとさせられる著者の目線がそこにある。

 くる日もくる日も/犬をとおして届く太古からの/風や声/
 鮮烈な手紙を彼とともに読む

 飼い犬を通して、生命体の根源まで遡っていく著者の視線は、普段見慣れた風景の中に神秘さをも見い出す。
やがてそれは遥か宇宙にまで突き抜けていく。

 ビッグ
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