陽炎の記憶/あ。
 
な懐古的な景色は消えうせ
あっという間に
ぎらぎらとした色彩の現実に戻ってしまう

小学校から出てきた子ども達が
日陰を選んで下校している
アカやクロやキイロやミドリ
色とりどりのランドセルが小さく踊り
鮮やかなものを持たないわたしは
濃灰色の影を溶け込ませるしかなくて

ふと日向に目をやれば
アスファルトから立ち上る陽炎が
見慣れた風景を歪ませていた

本当はおまえも
鮮やかさに焦がれているだろうに

戻る   Point(10)