『青春』/東雲 李葉
別れた人達を思い出す度
そっと痛み出す胸の奥
もう二度とは帰れぬ日々よ
化石のように静かに眠れ
忘れたくないことと
忘れてはならないこととを
決して見誤るな
青春は美談として語り継ぐためのものではない
始点でしかないのだ
いつ訪れるかも分からぬ終点への
始点でしかないのだ
ここが決して終わりじゃない
少年の頃に置き去りにしたままの謎の数々
幼さ故の罪と罰を
清算するまで終わりじゃない
抑え切れない奥の痛みは卵の殻を破るはたらき
遺跡は未来に焦がれるだけ
轍はこれから刻むのだ 他ならぬこの足で
化石の歌を聴きながら柔い春を後にする
青いままでいたいなら
陽気に惰眠を貪ればいい
歩き出さねば朱い季節へ
花は散り春は過ぎてこそ美しい
戻る 編 削 Point(1)