2020/モリマサ公
 
きはじめる
生き延びるために

生き延びるために


白鷺が一羽渡って行く
誰も震えてなんかなかった
ただ立ちどまって行く方向を確認していた
吸い込まれるようにそれは消えた

足と腕が自然と動き出す
精神はそれをもう感じない
「水」
あの日
あたしたちは父を無くし
僕たちは動かなくなった母や幼い兄弟を自ら葬り
年老いた予言者が壁に書き連ねた文字を繰り返し

ぐずぐずのアスファルト
浸水した水に浮かぶいくつもの屋根
この風景はおれたちの心を映し出す鏡だ

誰かが言った
誰なんだろう




 
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