砂/ホロウ・シカエルボク
 
い紙束みたいに見えた

触れるか触れないか
その一瞬に
小さな指先は一度だけ後ずさりした
ずず、ずず、ずず、砂地に沈んでいくように猫の中に飲み込まれてゆく指先、その時心に押し寄せた例えようのない遠い絶望のような感情のことを
その指の持主は決して忘れないだろう、冷えた、としか名づけることの出来ない
そこから流れてくるいきものであったものの異質な臭い
沈みきった後で
脊髄を叩いた
沈みきった後で
小さな指先の持主と一緒にそこに居た
小さな瞳の持主はその時はっきりと見た
小さな指先の持主が
長い長い間一度も瞬きをしなかったことを
見開かれたままの小さな指先の持主の目が
猫が砂に代わるのに従って針のように細くなったことを

死は、伝わる

小さな指先の持主は知ったのだ
そこに絡みついた



白い霧のような
淡い運命のことを



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