砂/ホロウ・シカエルボク
 



小さな指先は躊躇いながら数日前に脈動を止めた
ペルシャ猫の死体に伸びてゆく
開いたままの猫の目はそれが
思いもよらぬ出来事であったことを告げているみたいに見える
きっと誰に別れを告げる間もなかったのだろう
小さな指先はおぼろげにそれを悟る
死はそれ自体
報われないとしたものなのかもしれないね
動かない柔らかな毛並みは
どうしようもなく不自然に思えて
抑えようのない身震いを連れてくる
小さな指先は躊躇いながら伸びてゆく
数日前に脈動を止めたペルシャ猫の死体に
生きているときはさぞかし綺麗な毛並みだったのだろうそれは
どことなくそれらしくこしらえられた
黒い紙
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