距離/鈴木まみどり
近すぎるよ
近すぎて、
世界ときみとの境界が曖昧だよ
私たちが細胞でできているように、
世界が私たちでできているのならば、
私たちはさっさと境界を捨ててしまおう
間違うなよ、
縁取っているのは空間でも時間でもなく、
言葉だ
もげた花を市指定のゴミ袋へ、
がさり、と捨てたじゃないか
歯科医は、抜いた歯持って帰りますかと
訊かなかったじゃないか
自分の一部がゴミになるなんて喜びだ
午睡から起きると、
口のなかは海になった
血のような匂いがする
台所では母が魚に塩を降っているのだった
困った、
感動やしびれや生臭さは、
どうやら自分のなかにしか
共鳴
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