髑髏をドクロと読まないで/桜 葉一
神戸についたその夜に
変な老婆に捕まった
彼女は白骨化した頭蓋骨のような顔をしていた
まるで髑髏だ
月から垂れた灯りは
鬱蒼とした大地に降り注いでいる
老婆は僕の行く手を塞いだ
その目は今にも『帰れ』と言っているようだった
といっても帰るわけにも行かない
老婆は奇怪な声で叫んだ
「髑髏!」
「髑髏!」
どうしてそんなことをこんな髑髏みたいな老婆に
言われなければならないのか
まったく持って分からない
通りすぎる人は皆
不思議そうに振り返った
構わず老婆は奇怪な声を発する
「髑髏!」
「髑髏!」
どうしてだ
何故ゆえ神戸にきてすぐにそんなことを言われなければならない
しかもこんなババァに
僕はそんな老婆を突き放して
その場を逃げ去った
老婆はそれでも僕に向かって
ずっと叫んでいた
「髑髏!」
「されこうべ!」
「去れ神戸!」
と……
戻る 編 削 Point(3)