着地なき空の旅/邦秋
 
貴樹(あなた)は何を想って生きている

三百年の晴れ間と雨を
浴び続けて今に至るに
自らの新しい緑を見つめ
仲間の散る瞬間(とき)を泳いだんだね

ふと淋しいと思った朝は
小鳥が羽ばたき現れるだろう
枝の冒険が順調な夏は
人が行き先を拓くのだろう

ポンプを持たぬその身体には
タイムリミットがないのだから
土の下から始まる旅は
着地なき空の旅のようで

その飛行のさなかに人は
ファインダーを貴樹に向ける
偉大さか優しさか温もりか
それぞれの想いを一枚に込めるのに

「僕の木陰で休んでいきなよ」?
「私を見て何が楽しいの?」?
「今日の太陽の味は旨い」?
本当は言葉遣いすら聞こえてこない

貴樹は何を想って生きている
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