追憶の春/八月のさかな
今年もまたさくらが咲く
涙を吸い上げて
また地におとす
季節はただ往くだけ
巡ると見せかけて
春は残酷なくらいやさしくて
このうえないしあわせを見せ付けながら
かなしみを呼び起こす
ひとりになるのがこんなに怖い
ひとりでなくのがこんなにつらい
記憶が声になって押し寄せて
春のやさしさはわたしの悲しみにつけこむ
波のような風のようなほんのちいさな衝撃で
ジレンマに気付かせる
そうして、いまをがんじがらめにしようとする
めぐらないくせに
過ぎてゆくくせに
どうして どうして どうして
どうしてわたしをそっとしておいてくれないんだろう
忘れさせてくれないんだろう
空気は甘い
よるはあたたかい
今年もまた、さくらが散る
いまは、いまだけは
泣くのならだれかのそばで
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