「 友へ-奥多摩湖に想いを馳せながら- 」/椎名
静かによこたわる湖水の底には
起こされたくない想いや
忘れ去られた過去などが眠っているのだろう
まわりの山々は
何も語らず
緑の湖水を守り続ける
都会の喧騒
日々の悩み
人との争いなど
ここには
立ち入ることなど
できやしない
時間さえも迂回していく
風も
太陽も
ここでは
静かだ
耳を澄ませば
森の精霊達のつぶやき
おごそかな空気と
進むことを忘れた時が
眠りを続ける
深い悲しみに身を任せた者達よ
ここで共に心を癒そう
時の流れに目隠しして
ためいきと引き換えに
静かな眠りをむさぼろう
いつか
その顔に
ささやかな笑顔が戻るまで
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