深夜に蘇る幻影/AKiHiCo
深夜に起きる眩暈で
眼の前は白の世界です
青い弓張り月が煌々と
部屋を満たしていました
此処には僕ひとり
虚ろな眼で光の影の動きを
追ってはみますけれど
其処に僕は映っておりません
溜息を付いたらグラスの中に
丸い何かがぽしゃりと落ちました
疲れてしまいます
指が上手に動かせずに
握った筈のものさえ落ちてゆく
この虚しさを
どうやって文字にしましょうか
鏡の中の僕と僕
眼を合わせられなく為ったのは
何時からだったでしょうか
揺れる輪郭は精神の震えでしょうか
静寂が重たすぎます
鋭い痛みが体躯に走っては
止んで怯えさえ覚えます
意識は冴えるばかりの
立ち上がり台所へ
グラスに水を注ぎましょう
冷たさを喉へ体内へ
誰かの視線で失せる意識は
何所へ向かうのでしょう
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