ベーカリー/霜天
毎朝
燻る私の香りに包まれている
踏み込んだ片足が抜けないまま、明日に来てしまった
靴はいつの間にかなくなって、そんなことにも気付かない
それでも柔らかい、朝は好きだ
コップ一杯のミルクで、流し込める
いろんなものをその手につかんで
いろんなものを引き摺ってきた
何よりも毎朝、が欲しくて
味の薄いパンにかじりついては
その香りを吸い込んだ
足の先まで届けば後は飛び出せる
飛び方なんて知らなかった
ただ、飛べればよかった
時計が振り切れる直前に電車に飛び乗って
それが私の日課だった
あなたがいつも隣にいるような気がして
何故か顔だけがぼやけていた
順番に、
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