足は大地を踏む/ふるる
爆弾が恐ろしい雨のように降ったという
この辺一帯の夜空は紅に染まり
一夜にしてほとんどの家が失われたという
祖父の親しかった人 見知らぬ人が
眠っているかもしれないのだが
足は大地を踏み続けなければならない
昔 大きな戦いがあり
みな人を殺しに行った
自分を含めて人を
そんなことは知らずに
犬は美味しそうにごはんを食べる
祖父は毎年正月の三が日まで
食べ物を口にしない
誰がつらいか
なんて
なんてばかな想像
なんてばかな質問
祖父は曲がった手首を無意識にさする
足は大地を踏む
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