はこばれるいきもの/因子
「期限、切れてるよ」
で、笑う、
そのレスポンスが
現実であると
人の中で生きていると
赤いイヤホンが
耳をふさぐ
電車ではいつも
ドアの横に立つ
ひとりきりであると
人の中で生きていると
かたまりになって
ひとつの細胞になってレールの上を走っていく
窓の外にひとりも
知っている人がいないから
あれが現実なのだか
わからない
どこで乗ったのか
もう思い出せない
本当は最初から
私はここに立っていて
生まれてからいままで
ここから 外をみていた
手をふる人のひとりもいないから
いつまでもここから外をみていた
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