夜に走る/たもつ
ニュージーランドにいるキウィという鳥は
羽がすっかり退化してしまっていて
空を飛ぶことができない
夜行性のその鳥は
夜になると木の穴の中などから出てきて
えさを探す
もちろん飛ぶことができないから
歩く、もしくは走る
小沢君は夜になると走る
だからといって、そのわけを訊いてはいけない
小沢君はキウィではないからだ
誰も小沢君の大切にしているものを知らない
それでも小沢君は夜になると走る
大切なものがその両手から零れ落ちないように
キウィに大切なものなどあるのだろうか
種としての本能ではなく
個としての感情のなかに
それはキウィの感情を知る者にしかわから
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