水滴の生まれる場所/あ。
 
落ちた数を数えるよりも
水滴の生まれた場所が知りたかった

ささやき声も空気を振動させるような
ぎりぎり均衡を保っているこの小さな空間で
破裂する寸前の風船みたいな緊張感の中
今、きみが生まれた

ようやく開発の手が伸びたこの辺りの川では
深紅のザリガニは殆ど見られなくなってしまった
恐らく埋められてしまうであろうこの河流で
今、きみが生まれた

新しい命が生まれる場所は
決して新しい場所ではなくて
優しさの中でも痛みの中でも
生まれるべきものには関係なくて

宇宙の中の水滴の大きさも
目の前にある水滴の大きさも
何ひとつ変わりはしない

忘れてしまった遠い景色で
今もきみは生まれ続けてる
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