あでゅー/かのこ
少し軽めのコートを着た日
春一番が吹いた日
君のため息がこぽこぽと空を昇って
雨を降らせた日
手をはなした瞬間は
何も考えてなどいなかった
執行猶予が間もないから、と言って
君は颯爽とバイクに乗って走り去った
大事にしてた地図とコンパスを捨てて
僕の足元に残った壊れ物は思い出くらいのもの
人ごみの中を歩けば汚れるのは簡単さ
街中から聞こえてくるラヴソングも何てことはない
五月雨を集めて今や濁った川の水
僕の耳元に木霊すのは君の、結果的に最後となった、言葉
僕の声など
いらないのだ
散々馬鹿やって夜を明かした日
始発に乗って帰る途中
この川沿いの街の朝焼けは
まるで君のついた嘘みたいに、綺麗で
死刑台に咲く花くらいに
まぁいいや、もう
ただ、それだけ
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