「嬰子の褥」返詩 胎児のわたしから母へ/夏嶋 真子
なににも負けない
ただひたむきに乳房はふくらみ
狼の歯で噛むように 嬰子よ
さあ乳を吸え 私を吸え
闇の底明日ではない未来をけれど確かに握りしめ
生きていけると確信する時
放電する力 私がまたはじまったのだ
「嬰子の褥」より 作者 母 }
カアサン カアサン
母の胎内は夜のさなかでさえ
うすぼんやりと明るい海です
生きる母の情念をすっぽりと包みこんで
36.8℃の血液はそれが当たり前だと解きながら
母をめぐりわたしを守り
紅色の皮膚を透過した光がここへも届くのです
まなこのひらかぬわたしにも
夕日の色は赤いのだと告げながら
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