「嬰子の褥」返詩 胎児のわたしから母へ/夏嶋 真子
 
なににも負けない
ただひたむきに乳房はふくらみ
狼の歯で噛むように 嬰子よ 
さあ乳を吸え 私を吸え 
闇の底明日ではない未来をけれど確かに握りしめ
生きていけると確信する時
放電する力 私がまたはじまったのだ

「嬰子の褥」より 作者 母 }




カアサン カアサン

母の胎内は夜のさなかでさえ
うすぼんやりと明るい海です

生きる母の情念をすっぽりと包みこんで
36.8℃の血液はそれが当たり前だと解きながら

母をめぐりわたしを守り

紅色の皮膚を透過した光がここへも届くのです

まなこのひらかぬわたしにも
夕日の色は赤いのだと告げながら
[次のページ]
戻る   Point(30)