名前/葉leaf
、稜線と稜線とが出生を欺き合う土地で、私は無限個の名前を得てしまい、それが現在まで続いている。私の存在の硬度は全て体温へとつぎ込まれ、私の名前は稜線と直交する時間の先端の数だけ増殖した。すると、私の存在は限りなく速く移動するようになった。折り重なる闇へと手を伸ばせば掴取力は宇宙の限界まで跳び私は闇を速視することしかできず、友人に呼びかければ声はあらゆる距離を負の距離に換えて友人を跳び越えてしまう。私の存在の内部は名前を連鎖させるだけで消滅させない。再び名前が分裂し響き尽きる大陸へと行くしかなさそうだ。この物語もきっと、無限大の速度であなたを通過してしまうだろう。あなたがもしこの物語を読めるとしたら、あなたもまた無限個の名前を持っているに違いない。
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