ちりちりと揺れる橙の玉/mac
 
河原であの娘と手持ち花火

今日は風が強いので何本もマッチを無駄にした
その度にキミはくすくすと笑う

去年の花火だからしけっているのだと
僕は頭を掻く

キミは川面に浮かぶ月の反射を見てる

風は川下から吹き上がる
キミの長い髪が涼しげに風を纏う

そんなキミに見とれて
またマッチを無駄にする

静かね
まるで世界から私たち意外全ての人がいなくなったみたい
明日が来る事すら嘘みたいね

キミは川の水に指先を遊ばせて
遠い目をする

月明かりが台風独特の雲に反射して
空は明るい

ようやく点いた線香花火をキミに手渡す

私は線香花火が一番好きなの
眩しくは無いけれど懸命で儚くて
だからこそ愛おしい

僕もちりちりと儚げに咲く
火の花を見つめていた


マッチが底をつき
今年も花火が残ってしまった
また来年ね
とあの娘は笑ったが

もうその時は来なかった
花火は色褪せて大人になった僕の手の中

今年もキミに会いに来たよ

風の強い月夜の晩


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