指/マッドビースト
帰宅ラッシュの車両
油っぽい空気の中
違う体が欲しいって思う
座席には
よれよれの背広に
薄くなった頭を並べて
眉間にしわを寄せて目をつぶっている
サラリーマン達
きっと生まれかわる夢をみてる
純白のまっさらな体
悩みを置いて飛んでいける翼
疲れない四肢
僕らにはこの指しかない
いつも触れなければいいものばかりに触れてしまう指
痛みでさえも何度も撫でて
確かめるように傷ついていく
もうどうしようもない歴史
鳥は飛び続ければ宇宙にいけると思っているかも
花は咲き続ければ誰か見つけてくれると思っているかも
獣は食べ続ければ死ぬことはないと思っているかも
僕らは撫でつづければ刺も愛してくれると思っているかも
僕らにはこの指しかない
不安定なものばかりの輪郭を確かめたがる指
違う体が欲しいから抱き合うのだろうか
君の輪郭をたどるだけの指
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