砂漠の中の砂時計/詩人に口なし/海里
思うから現れるのです
幻視であれ
見てしまうから
桜の木の下には
死体が埋まっているというその桜は
いつも必ず満開の桜でしょう
だからあんなに
山ざくら里ざくら
一重も八重も
妖しく狂おしく咲くのだと
だからね
散ってしまえば
もう何も埋まってなどいない
葉桜の頃そこには
土の中には
もう何もない
死体も
春の花のひとときにだけ
人々の幻視が引き起こすイリュージョン
消えたり
現れたり
どちらにしても誰にも気がつかれない
土の中
暗い暗い土の中で
桜の根にだけ
抱きとめられて
ほら
少し離れたところで彼岸花が咲いた
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