ぼくたちが生きている、ひとつの話/あ。
 
ぼくたちはきっと
忘れるために生きているんだね

呼吸の数だけ物語があって
さめてしまった二酸化炭素から
秘密の木箱に片付ける
時々開けて眺めては
過ぎた呼吸を試してみる

そんなことを繰り返してるのは
どうやらぼくのほうだけみたいで
きみはさっさと大気に撒いて
歩いてきた道の肥料にしてる

きら きら きら と
光合成をするには充分すぎる
曇りのない光を惜しみなくふりまき

どうしようもなくいたいけな
違う世界にいるきみよ
以上でも以下でもないはずなのに

褪せたものから風化していくのに
ずっと気付いていなかった
木箱はいつしか朽ち果てて
広い大地の栄養になり
新しい思い出に変わる

そのためにきっと
ぼくたちは生きているんだね

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