光の遍歴/木立 悟
ぼんやりとした広い場所のあちこちに
色 数 かたちを変えながら
光が点滅しつづけていて
指先にしか届かないくらいの
かすかな熱を放っている
捕らえようとひらかれた
片目に余り 片手に余り
光はこぼれ
生まれたばかりの低音のように転がる
細やかな機械の 細やかな雑音
光を光に近づけてゆく
空あおぐもののそばを
森は昇る
山は昇る
雲と雲と雲の間の
人のかたちをした青が
すべての場所を飛び越えてゆく
低い空の前で風は呼吸し
胸と背中を高くひらき
昇りゆくもの
降りそそぐものの遍歴を歌う
朝は近い
夜は消えない
光はすばやく光ではなくなり
ふたたびすばやく光にかえる
広い場所からも
手のひらからも離れ
どこか遠い羽に満ちた
半分だけの故郷へむかう
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