水に触れる/木屋 亞万
私は女ですから、髭を剃るようなことは一生ないものだと思っていました
私はいま髭剃りを手にしているのですよ
少女の私が聞けば目を引ん剥いていることでしょう
何でも機械化する時代ですから
剃刀の刃が丸い覆いに隠されるようになって、
稲を刈る機械と同じような振動音を響かせて髭を刈り取ってゆくのです
水に触れないで洗濯を済ますことができるようになって
赤く霜焼けた手の痺れに耐えて家事を行うことももうありません
そうなってから洗濯する回数は馬鹿みたいに増えて、
たとえ汚れていなくとも、すぐに洗濯するようになりました
そのせいで川は泡だらけになりました
作り話じゃありません
川が汚
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