地図夜/たもつ
 
をひとつ買うと
やはりわたしの作るものよりやや緩めで
タプンタプンという言葉がぴったりでしょうか
いつもタプンタプンよねえ、と女将は歯を見せて笑います
それよりもわたしは店内の塗装の剥げたところが気になって仕方がないのです
実の姉にも言ったことがないので言わないことにしています
あの人は家で地図帳を開き
頁の上を指でなぞっていました
牛乳羹だけを置いて帰るつもりでしたが
あの人がいっしょに食べていけ、と言うものですから
地図帳を見ながら二人で食べました
途中、いつもよりタプンタプンだな、という言葉に頷いたのは
ほんの少しでも似ているところがあればいいと思ったからかもしれません
気が付けばすっかり日が暮れていて
もうそんな時間ではないな
と、あの人は地図帳を閉じました





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