虚言症スケッチ/里欣
虚言症スケッチ
?
ぼくは自慰をしない
自慰をしたことがないんだ
どうやって自慰できるの?
医学出身を自称した彼が
重症の虚言者らしい
?
甘ったれた賛美や
同情をそそる不幸話や
文字間の虚空を生かせば
他人の心の純粋な奥に
如何に容易に押し入れるか
彼が熟知した
?
羊が食われた
彼は詩を生きる糧にすがりつき
自殺云々で糾弾の炎を消した
春が来る前に
身分証明書を落とした
彼が誰であるか
彼の汚い爪
こき使う顎の瞬間的な線条
軟弱
響く屁
貪欲
これならもう誰にも分からない
特に自分に
彼が今夜もどこかの舞台で
絵空事や孤独などと舐めあう
?
幻影のジレンマを
詩や大地や空気が無言で抱え
どんな展開を進めるのだろうか
?
幻影はプレゼントで
爆弾でもあった
郷愁の廃墟は
真実に痛いほど輝く
もしかしてこれこそ
神の恵みで
最良な一手かもしれないと
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