匙ですくって、召し上がれ/あ。
一度にたくさん、ではなく
そろそろ、と流し込む感じ
絶対濃度を持たない空気は
放流の力で簡単に色を薄め
侵入者だったはずのものが
気付けば当然になっている
さっきまで開いていた花は
知らん顔して眠りについた
わざとらしく大あくびをし
その瞬間を捉えようとする
何処か遠くで雀の声がした
どろりと鈍い足跡を描いて
眩しい光がふわりと溢れる
さっきまでの分厚い静寂が
夢だったのではと錯覚する
淡く優しい光に満たされる
少し古ぼけている銀の匙で
たっぷりすくって眺めたら
思い切って食べてしまおう
幸福に満ち溢れたこの朝を
身体とこころの隅々に流し
最果てなどないことを知る
抱きしめるべき美しい今を
匙ですくって、召し上がれ
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