ひとつ まわる/木立 悟
埃の海に生まれたもの
きらびやかに手放されるもの
岸から流れつづける景
底をすすむもののかたち
褪せた光の降る路地の
さらに褪せた色の扉の
入るものもない静けさをすぎ
さらに先へ先へと迷う
何かを迎えに来たものが
見えぬまま会えぬまま去ってゆく
流れることだけを計る器械が
窓を覆う壁を見つめる
氷の船が夜をすすむ
落盤
いくつかの光の卵が
小さく闇を照らしている
曲がり角の呼び声が
夜から朝へと水になり
水紋に満ち
影に満ちる
文字の羽
明け方
音のないつらなり
逆さまのつづき
光を透り光は来る
枝は枝にこだまする
流木の陰から 砂のなかから
鳥のかたちだけが飛び去ってゆく
やわらかく巨きな水の歯車
海を回り 空を回る
数え切れないしぶきやしぶき
遠くへ遠くへ冬は降る
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