君のナイフで、僕を殺して。/智鶴
 
不器用な指で傷を撫でて
君の演技を思い出している
下手糞な君の嘘も
確かに僕達は見詰め合っていて
でも君は何処も見ていなかった

とっくに何も感じなくなった夜には
生きていることすら忘れてしまいそうになる

繰り返される君の嘘を見抜く度に
この目が役立たずなことに気付く
何も見極められないくせに
どうして君ばかり殺してしまうんだ

愛することが虚ろにならないように
酷く醜い言葉を投げ付けて
生きていることを忘れないように
左腕にはナイフを何度も突き立てた
紅い真実が悲しく噴き出す度に
君を愛することが出来ると思った

仮面を重ねた嘘ばかり投げ付けたくせに
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