等価値にならざる声/松本 卓也
 
打ちのめさせられる瞬間というものは
いつも予想外にくるものであって
勝手に積み上げていた心は
たとえどんなに軽々しくても

崩れ落ちる音を聞く毎に
馬鹿なのは自分だと思い知る
風が吹いていないからと
築いた砂の城に住んだところで
少し息を吹きかけられれば

所詮は塵芥

信じたから馬鹿を見る
期待するから傷ついて
諭す言葉は無駄足を踏み
その視線その台詞
否定する語彙だけが
右へ左へ駆け巡る

つまりはね

信じてもらわなくても良い
期待など重荷にしかならず
言葉の効用など空想
何も見ず何も発せず
その場しのぎを繰り返し
右往左往がよく似合う
[次のページ]
戻る   Point(1)