送別/霜天
 
結局
無いものは流せないのだ
光る丘で寝転ぶような、広がりを
繋ぎ止めておくことは、



思い出に縋るようにして歩き
引き摺るようにして、眠る
東京は優しかったよ、と言ったあの人は
しがみついた僕らと、どこで違ったのだろう

少し前に、手を振った
明日は少しだけずれながら
二人分の夕暮れを与えてくれる


どこまでが優しかったのだろう
手を合わせた人数分の秒針の進む、音
同じだけの、曲がり角


拡散する
世界と同じように
あなたの名前、という言葉が広がっていく
ここにも、
少しずれた朝にも



緩やかに別れていくことは
    緩やかに繋ぎ止められることでも、ある



無いものは、零せないままなのだ
結局
拡散したあなたのなかで
私という言葉が広がっていく


少しずれた朝
緩やかに、手を振る
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