彼方/岡部淳太郎
ずっととおく
あちらのほうへいってしまった人が
てをふりつづけているようにおもえる
そのしろいすきとおったてのひらが
やみのなかできょりとともに
うすくなっていきながらも
きえずにまだみえているようにおもえる
あるいはまたとおいえんらいの
きゃくのように私たちのいる
ばしょへやってきてなにかを
おとしていくようにおもえる
ずっととおく
あちらのほうでいまその人は
なにをおもっているのだろうか
ゆれるやなぎのきのようにゆれる
てのひらのいめーじのむれが
かつてのきおくとまざりあっていくようにおもえる
私たちはきっともともとばらばらに
きりはなされたいのちであり
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