午後の喫煙/佐々宝砂
 
ルドのキャスターを
ジーンズのポケットから引っぱり出す
ちょっとでなくひしゃげている
どうにか一本取り出して
ぎらぎらする日ざしの下
熱くなった百円ライターで火を点ける
火がでかすぎて眉を焼きそうになる

軽すぎる煙を
すでに充分タールで冒された肺に吸い込む
深々と吸い込む
すべて憤懣やるかたないものを吸い込むつもりで吸い込む
涙など流せないまま吸い込む
隣のベンチのカップルが煙に顔をしかめるが
吸い込む権利があると信じて吸い込む
腹を減らした子どもがメシを食うように吸い込む

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