春の歌/あ。
隣の家のカナリヤが
萌黄色の羽根を少し震わせ
細長く高らかな声で
ちよちよと鳴いています
向こうから歩いてくるねえさまの
頭に飾ったかんざしには
うすももいろの桜がしだれており
控え目に花びらを広げています
石畳はこつこつと音を立て
浮かれた季節の足音を響かせます
カナリヤはくちばしをかたかた動かし
ねえさまは祇園小唄で踊ります
幼子が歌いながらついている手鞠は
見るも鮮やかな椿が描かれてました
てんてんてんで春の歌
お花が咲いたら喜ぶよ
小鳥が鳴いたら喜ぶよ
てんてん、
つくつく、
てんてんてん
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