砂漠の中の砂時計/ニャーの花、菜の花/海里
 
茶色い野良猫
わたしに呼ばれるときには茶色ちゃん
菜の花とともに
帰って来たね

去年の春
かわがっていたおばさんがいなくなって
夏と秋と
だんだん見かけなくなって
冬には思い出すたび心配だったけど

ニャーの花、菜の花が
菜の花畑で一斉に背伸びをして
猫や犬や子ども達には
ジャングルほどにもなったら帰って来た

一人住まいしていたおばさんを
帰国したという息子が迎えに来て
アパート内の怪文書はそれから影を潜めた

虚言癖の
少しあるひとなんて珍しくもない
虚言癖の
少しもないひとのほうが珍しいだろう

だけど猫に話しかけるとき
ひとは正直だ
ニャーの花、菜の花、茶色ちゃん

どこかでずっと
冬にも元気でいたんだね
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