へび/ことこ
 
真夜中に
足の爪を切れば
へびがやってくるのよと
かあさんに教えられたから
耳をそばだてる
キッチンのじゃぐちから
漏れている
しのび寄る音
あれは雪どけでしょうか

ぱちんぱちんと
はやる気持ちを沈静化させれば
切り離される
爪にともった灯は
蒼く
冷たく
ゆらめいて
研ぎ澄まされていく
ふくらはぎに停滞している
リンパ腺で
小さく壊死していく
悲鳴声

リビングにねむるポトスの
葉のうら側に
びっしりと貼りついている
うろこが
気孔をふさいで
目の離せない
あれはわたしの背中なのだと
そう遠くない日に気づいていた
永久凍土なんて
ほんとうははじめからなかったから

みどり色の
息を吹き返して
きっとわたしは
ほほえみを見つめるのでしょう
留まることのない
うつろいを
とぐろを巻いたまま
てらりと舐めて
味わうのでしょう
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