ひとつずつ死滅する暮れ方からのアルペジオの残響/ホロウ・シカエルボク
浅黒い空に陰鬱な虫が踊る、太陽の時間に間に合わなかった雨上がり、そこの破れた靴の中はもうすでに踏みつけた水たまりの記憶で一杯で…アスファルトの上で腐葉土を踏みしめているような違和感を構成していた
ひとつ、ふたつ、夜の始まりが道に降るたびにばらけるその日一日というフォルダ、展開しても展開しても増してゆく闇の中に逃げて行くばかりで、ただヘッドライトに、ただヘッドライトに浮かんでは溶けてゆく輪郭があるばかりで…文字でなぞらえぬものをすべて虚ろと呼んでしまうのか、何かを握りしめるさまを装った空っぽの手のひら
喧噪のわずかな隙間に、細胞が次々と死滅するその音を聞いた気がするんだ
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