春/たちばなまこと
「やる気がない!」と朝の会
突然に怒鳴り散らす担任の春を
冷めた目で眺める日直の朝。
理不尽なされ方に敏感な、理屈っぽい女子高生が
キメ台詞を復唱しながら、日直の用聞きで職員室に乗り込む。
「さっきは悪かったね」と
春は、居心地悪そうに笑みを浮かべてていた。
そこには強面の社会科の先生や、表情など無いと思っていた
化学の先生の笑みもあった。
番茶の香る職員室
悪くないところかもしれないと思った。
春は当時四十歳。
今思えば、働き盛りで悩み盛りの青年で
ガタイに似合わず数学教師。
パンと張った体から、出世願望がにじみ出ている。
進路指導の授業では、学歴社会の厳しさな
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)