スケアクロウ/木葉 揺
 
旅に出て
ようやく畑にたどり着いた
遠くを見て佇む案山子ひとり
腕はだらりと垂れている
そばへ歩いてゆくと
帽子を取って
お辞儀をしてくれた

私もお辞儀をする
顔を上げると案山子は
帽子を持ってない方の腕で
遠くを指した

代わり映えしない景色
なのに
私を促すように
遠くを指し続ける
帽子は胸の辺り

とまどっている私に
たしなめる目をして
ときどき
期待外れを滲ませる

足取り重く
私は歩き始める
どこだかわからない
案山子の指す方向へ
後ろで烏が
好奇心で集まって
私を噂するのがわかる

心細さに振り返ると
烏は皆
扇のように飛び去った

案山子はうつむいている
帽子をかぶった後姿
もうどこも指していない

私はまた歩き始める
畑を出て
同じような道を
ただひたすら

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