四季の風/岡部淳太郎
 
四季の風がやわらかく
吹いてきてもはや空は
やわらかさのためにぼろぼろと
崩れ落ちそうだ
それぞれの四つの季節が
前後左右から風を吹かせ
大地は反り返り鉄塔は
まんなかでひたすら痒みにたえている
このやわらかさのためにもはや
信仰の道に立ち止まるしかない
やわらかい人々の笑顔のために
すべてが腐敗しては通過していく
風は追いつくものではなく
追いやるものであるべきだ
その速度をまき戻して次から次へと
移り変る花の記憶をながめる
やわらかさの中にある
この平和な世界よ
隠しきれないもののために
ますます栄えよ
四季の風が吹く
ふさがれたやわらかい
破れない膜へ
破れない
私はかたい殻



(二〇〇八年十月)
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