紫苑/柊 恵
 
うれしい
やっと気づいてくれたのね

ずっとずっと待ってた
言葉がとどくのを

あたしのことは知ってたよね?
何度か来てくれたもの

今の あなたにも幾つもの痕跡があるものね

うれしいのは、翠月さまに会えることよ…


翠月さま
ひょろんと背が高くて
笑うと目がなくなるんだ
あたしは あの頃が一番楽しかった

翠月さまが村にいらして、あたしは字を知った
そんな素晴らしいものがあることさえ、
知らずに ただ過ごしてた

読み書きを知って
万葉の歌を知って
きらめく物語や
つわものの盛衰や
せつなき生きざまや…

世の中って広い



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