スポーツチャンバラの大会にて/北村 守通
ついさっきまで
子供達に追っかけられながら
スポンジの棒でたたかれながら
やわらかく笑っていた
おっちゃんが
今
ぼくの前に対峙する
でっかい
でっかい
でっかすぎる
右に動いてみたけれど
目と目はやっぱり合ったまま
左に動いてみたけれど
一気に
距離を縮められそうで
動けやしない
防具の下の目に
迷いは無く
澄み切っている
おっちゃんが一歩前に出る
ぼくは二歩下がって右に廻る
おっちゃんが二歩前に出る
ぼくは更に右に飛んで逃げる
跳ね返って
三歩分前に出る
と
おっちゃん
慌てて二歩下がる
ああ
おっちゃんも
怖かったんだね
その時
初めて
おっちゃんの目が
笑ったように思えた
ぼくも笑った
もう
試合じゃなくってもよかった
斬られてもよかった
おっちゃんに
斬り込んで行った
子供達の様に
無邪気に
棒をぶんまわし
軽やかじゃないけど
楽しげにステップ踏んで
渾身の突きで
突進した
脳天から
さわやかな音が
響き渡った
戻る 編 削 Point(7)