潮騒/壮佑
 

冷んやりした部屋の
窓際に椅子を置いて座る

裸電球に照らされた
オレンジ色の壁に
魚の形の滲みが付いている

じっと見つめていると
風が梢を揺らす音に混じって
足音が聴こえてきた

だんだん大きく
近くなると
ドアの前で
ぱたっと止まった

(ただいま

誰も言ってくれないから

(おかえり

ひとりで呟いてみる

歩き出した足音は
だんだん小さく
遠くなって
やがて
消えてしまった

誰だったのだろう

魚の形の滲みが
部屋中に広がって
すべてが闇になった

たぶん夜の海だったのだろう




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