死の冷たさについての素描/岡部淳太郎
人は生きている。日々生きていて、未来に向かってそれまでと同じように生きていくために生きている。つまり、明日の生をより確かなものにするために生きている。だから、厳密に言えば、人は生きている限り死のことを考えることは出来ない。生きているということは生を体験しているということであり、生きながらにして死を体験することは不可能だ。だから僕がこれから書くことは、あくまでも生の側から見て死を想像することでしかないし、荒っぽい素描でしかない。そのことを自分自身に確認させた上で、書き進めてみたい。
五年前に妹が死んだ。これまでにそのことをテーマにして詩や散文をいくつも書いてきたし、そのいっぽうでごく私的な出来
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